 | 片手で楽に持てる「ΣBook」。 コントラストはイマイチだが、視認性はいい。 |
■ はじめに 遅ればせながら何回かに渡って、2003年7月上旬に開催された「NETWORLD+INTEROP 2003 TOKYO(N+I 2003)」のレポートをお届けしている。N+I 2003は、その名のとおり、ネットワーク機器の展示会から発展してきたものなので、メインは、ルータだったり、ハブ(HUB)だったり、ファイヤーウォール(FW)だったりする。そうした中で、「ネットワークにつながった家電」を感じさせるテーマで、広範な機器を、さまざまなシーン別にわかりやすく展示していたのが松下電器だ。すでに、前回バーチャルキーボードについては紹介したが、今回は、筆者もなかなかお勧めの新デバイス「ΣBook(シグマブック)」について紹介しよう。 ■ まんま本として楽しめる「ΣBook」 それでは、早速だが、「ΣBook」をみていただこう。下記が実際に「ΣBook」に漫画を表示してみたところだ。ご覧のとおり、イラストのテイストはもちろん、漢字も無理なく読める。操作は見開きで開いたときの、左下と右下のボタンだ。これらを押すことで、ページを繰ることができる。書き換えにかかる速度は、1秒以下。パラパラとめくることは出来ないが、「ΣBook」の場合、一度読むのをやめても、閉じたところから、そのまま開けるので実用上問題になることはなさそう。下記に詳しく述べるが、「ΣBookは、液晶パネルの表示」には電力が不要なのだ。このため、そのままパタンと閉じても、表示しているページは消えることがない。開けばそのままページを見ることが出来る。 また、128MBのSDメモリカード1枚の中には、500ページものの単行本を数十冊格納することが可能という。モノクロならではの効率のよさというか、イラストが主体の漫画の場合でも、同等以上格納できるという。  | いわゆる反射型液晶パネル。 その本っぷりがわかってもらえるだろうか? |
|  | 別のページ。 こんな小さいコマ割でもまったく違和感がない。 |
|
■ XGA液晶パネル、表示だけなら電源不要 以上、まんま本として楽しめる「ΣBook」の使い勝手を紹介してきたが、実は驚くのはここからだ。この「ΣBook」に使われているのは、記憶型液晶パネルと呼ばれるもの。この「ΣBook」には電源オフという概念がない。常に、液晶パネルには書籍のどこかのページが開いてある状態だ。本物の書籍と変わらない。むしろ、風や、折癖でページが勝手に変わったりしない分、本よりも優れている。この液晶パネルは、ページを書き換えるときだけ電力を必要とするが、書き換え終えたらまったく電力が不要なのである。このため、内蔵する単3電池で、約10,000ページ以上読むことができるという。500ページものの単行本なら、単3電池2本で、20冊近く読めてしまうわけだ。また、電池の保持期間も使わないなら、半年は持つという。もちろん、電池の交換中にも、液晶パネルが消えたりすることはない。 解像度は、180dpi。10年前のプリンタとほぼ同等の解像度だ。活字を 24dot(pixel) であらわしていた頃で、いわゆる熱転写プリンタとか、ワープロ、とかが流行っていた頃のプリンタ出力物の解像度があると思ってもらえばいいだろう。液晶パネルは XGA の解像度だという。記憶が間違っていなければ、なんとも贅沢に、XGA液晶パネルを2画面利用しているはずだ。
 | 電源は単3電池2本。 これで半年、単行本20冊程度は読めるという。 |
|  | 書籍の供給はSDメモリカードで。 安価になってきた128MBもあれば十分。 |
|
 | これが「ΣBook」を使ったサービスの全貌。 |
■ 今秋登場、3万円台で、同時発売書籍タイトルは5,000以上 この「ΣBook」だが、このレポートだけなら、なんだか未来の技術として片付けられてしまいそうだ。しかし、なんと2003年秋には、3万円程度で発売予定。しかも、同時にこの「ΣBook」で利用できる書籍のタイトル数は、5,000を超えるという。町のちょっとした本屋さん並みのタイトル数は揃うわけだ。 ■ 書籍の代わりにはなる。雑誌の代わりになるか? 以上、ご紹介してきたが、「ΣBook」の実物を体験した限りでは、
- 手で持ってまったく違和感のない重さ。約 500g
- 視認性のよさ
- 消えない記憶型液晶という新型デバイス
- 今秋発売 3万円という手頃感
- 同時タイトル 5,000という十分さ
と、にわかには信じられないものがある。電子テキストを超えて、きちんと書籍として楽しめる「電子書籍」が登場したのは、確か3年くらい前。パソコンや、PDA で読むのがそのスタイルだと思っていたところへいきなり登場したのがこのデバイスだ。ニュースだけみていると、すっかり現実離れしているのだが、目の前で動いているものをみると、なかなか感動する。 コンテンツの面では若干不安はあるだろう。5,000点の中に何冊話題の商品があるのだろうか。本と同じタイミングで登場するだろうか? 新聞や、雑誌は読めるのだろうか?と考えていくと、万人にとって魅力のあるコンテンツがどの程度あるかは、まだわからない。 ■ 終わりに 今秋はブルーホワイトの形で登場する記憶型液晶パネルだが、松下電器では、ブラックホワイトタイプや、カラータイプの開発も進めているという。あわせて、高精細化や、小型化も進んでくるだろう。 そうなれば、PDAの技術と組み合わせれば、電池が何ヶ月でも持つPDAや、ノート。果ては、ネットにつながるホワイトボードなどなど、さまざまな用途に利用できるに違いない。ノートパソコンに、PDA、いずれも「革新的」と思える商品が登場しなくなってきている気がするが、今回の松下電器の電子書籍端末「ΣBook」に利用された技術を応用していくだけで、ノートパソコンにも、PDA にも「革新的」と読める商品が登場してくるかもしれない。「ΣBook」とあわせて、そちらも楽しみだ。
|