■はじめにすでにニュースでもお伝えしたように、8 月 17 日よりデルの Windows Mobile 2003 Second Edition 搭載機「Axim X30」の販売が開始された。PXA 270 プロセッサ 312MHz を搭載したスタンダードモデルが 34,800 円、PXA 270 プロセッサ 624MHz を搭載したハイエンドモデルでも 49,800 円(いずれも税込み)と、非常に求めやすい価格ながら高いスペックを実現したコストパフォーマンスの高いモデルと言えよう。 遅れ気味との噂があった出荷も、記事執筆時点(2004 年 9 月 6 日)ではすでに始まっているとのことで、そのハイスペックぶりを堪能しているユーザーの方も多いことだろう。WindowsCE FAN でも、ハイエンドモデルの実機をメーカーのご厚意によりお借りすることができたので、写真や画面キャプチャを交えて紹介していきたいと思う。  | 画像はランドスケープ表示させたもの。Windows Mobile 2003 Second Edition であることはもちろんだが、画像の右下にさんぜんと輝く Bluetooth アイコンも本機の魅力の一つ。通信面においても一切の抜かりはない |
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■筐体 さて、本来であれば新機種レビューの際には筐体写真を 2 回に分けて詳細に掲載することになっているのだが……。実は、今回の X30 は、以前フォトレビューで紹介した「Dell Axim X3i」(リンク先は X3 の写真なので、“その 2 へ→”をご覧いただきたい)と筐体にほとんど変わりがない。一応、眼を皿のようにして違いを探してみたのだが、気付かなかった。唯一発見できた違いは、筐体にプリントされている文字の色だ。下に写真を掲載しておいたので、今回の筐体写真はこれでご容赦いただきたい。  | こちらが X30(左)と X3i(右)を並べた写真だ。正面写真のみではあるが、まったく違いがないのが分かってもらえるだろうか? |
|  | こちらは液晶の下にある“Pocket PC”の文字。左が X30、右が X3i だ。文字の濃さが微妙に異なっている(X30 は淡く、X3i はくっきりとしている)。実物ではよりはっきりと差を感じる |
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■ベンチマーク フォトレビューにあまり意味がない、ということであれば次に行うべきはベンチマークだ。QVGA 液晶ということで VGA 待ちのユーザーからはあまり注目されていない X30 だが、実は海外のサイトなどで実施されているベンチマークテストではぶっちぎりのトップを独走しているという、凄まじい性能の持ち主なのである。今回は、海外の定番ベンチマークソフトである Spb Software House の「Spb Benchmark」を使用してテストを行った。比較のために、前機種 X3i と、Spb Benchmark 公式サイト上に掲載されている他機種のデータも掲載しておいた。 *ちなみに、インストーラからでは Spb Benchmark がインストールができなかったため、デスクトップ側の「C:\Program Files\Spb Software House\Spb Benchmark」にある“SpbBenchmark.arm.CAB”を ActiveSync のエクスプローラで直接本体にコピーした。 ベンチマーク項目 | Dell Axim X30 | Dell Axim X3i | Asus MyPal A620 (海外版) | HP iPAQ h2215 (海外版) | HP iPAQ h4150 (海外版) | MiTAC Mio558 (海外版) | Spb Benchmark index | 2033 | 1500 | 1573 | 1146 | 1606 | 774 | CPU index | 2438 | 1754 | 1858 | 1784 | 1814 | 1748 | File system index | 1401 | 1053 | 1092 | 1126 | 1171 | 490 | Graphics index | 5131 | 3827 | 4034 | 567 | 3858 | 548 | Platform index | 1520 | 1211 | 1277 | 1204 | 1290 | 624 | Write 1 MB file (KB/sec) | 1708 | 1120 | 1285 | 1257 | 1270 | 1086 | Read 1 MB file (MB/sec) | 32.6 | 26.5 | 28.7 | 27 | 27.1 | 13.9 | Copy 1 MB file (KB/sec) | 1806 | 1201 | 1281 | 1262 | 1268 | 1117 | Write 10 KB x 100 files (KB/sec) | 1108 | 747 | 654 | 905 | 919 | 754 | Read 10 KB x 100 files (MB/sec) | 10.8 | 8.12 | 8.64 | 9.78 | 10.5 | 4.86 | Copy 10 KB x 100 files (KB/sec) | 915 | 657 | 500 | 799 | 809 | 657 | Directory list of 2000 files (thousands of files/sec) | 25.1 | 20.2 | 23.6 | 19.6 | 20.9 | 5.41 | Internal database read (records/sec) | 2095 | 1473 | 1549 | 1339 | 1428 | 821 | Graphics test: DDB BitBlt (frames/sec) | 316 | 265 | 316 | 52.3 | 271 | 53.7 | Graphics test: DIB BitBlt (frames/sec) | 39.4 | 26.5 | 27.2 | 22.8 | 26.9 | 22.3 | Graphics test: GAPI BitBlt (frames/sec) | 935 | 727 | 752 | 60 | 725 | 57.4 | Pocket Word document open (KB/sec) | 49.3 | 35.2 | 44.2 | 100 | 39.3 | 16.1 | Pocket Internet Explorer HTML load (KB/sec) | 7.85 | 6.91 | 7.88 | 7.96 | 8.8 | 4.24 | Pocket Internet Explorer JPEG load (KB/sec) | 252 | 203 | 154 | 208 | 228 | 185 | File Explorer large folder list (files/sec) | 951 | 968 | 641 | 564 | 592 | 373 | Compress 1 MB file using ZIP (KB/sec) | 327 | 226 | 263 | 225 | 245 | 234 | Decompress 1024x768 JPEG file (KB/sec) | 893 | 584 | 613 | 606 | 609 | 559 | Arkaball frames per second (frames/sec) | 312 | 232 | 250 | 51.4 | 243 | 49.7 | CPU test: Whetstones MFLOPS (Mop/sec) | 0.115 | 0.075 | 0.076 | 0.077 | 0.076 | 0.075 | CPU test: Whetstones MOPS (Mop/sec) | 84.3 | 54.2 | 55.3 | 55.4 | 55.4 | 54.4 | CPU test: Whetstones MWIPS (Mop/sec) | 7.56 | 4.95 | 5.01 | 5.02 | 5.01 | 4.92 | Memory test: copy 1 MB using memcpy (MB/sec) | 120 | 100 | 103 | 102 | 101 | 101 | | テストは当然ながらプロセッサを最大性能(X30=PXA 270 プロセッサ 624MHz、X3i=PXA 263 プロセッサ 400MHz)に設定して行っている。結果はご覧のとおり。Pocket Word のファイル展開と IE の HTML 展開を除いて、すべての部門で X30 がトップに立った。一世代プロセッサが違うとはいえ、前機種の X3i は既存の Pocket PC 2003 搭載機の中では、マイタックジャパンの「Mio 558」と並ぶ最も高速な(はずの) CPU を積んだモデルである。その X3i とも大差を付けてしまう X30 のスペックには驚くばかりである。 ■動画再生 動画再生に関しては、「Pocket MVP」に変わる新定番動画プレイヤー「BetaPlayer」の Benchmark 機能を使用した。サンプルファイルは同サイトに置かれている QVGA 用の最高画質ファイル“RL_MQB”(ビデオは 320x240 24fps 512Kbit/s B-Frame 2-pass DivX 形式、オーディオは 44Khz Stereo 128Kbit/s MP3形式 )を使用し、Stable(安定版)の ver 0.04、Unstable(不安定な最新版)の ver 0.091 の両方で測定した。測定時の条件は、外部電源使用、CPU を最高性能に設定、サンプルファイルは内部メモリ上に設置、となっている。 ベンチマーク項目 | Axim X30(ver0.04) | Axim X3i(ver0.04) | Axim X30(ver0.091) | Axim X3i(ver0.091) | Average Speed | 296.02% | 205.54% | 316.61% | 211.10% | Bench Time | 0:51.161 | 1:13.683 | 0:47.834 | 1:11.741 | Bench Frame | 71.05 | 49.33 | 75.99 | 50.67 | Rate:Bench Sample | 130489 | 90601 | 139568 | 93058 | Rate:Bench Frame | 1.9Mbit/s | 1.3Mbit/s | 2.0Mbit/s | 1.4Mbit/s | サンプル動画のデータ | Video Frames | 3635 | Audio Samples | 6675840 | Amount of Data | 11905KBytes | Original Time | 2:31.448 | Original Frame | 24.00 | Rate:Original Sample | 44100 | Rate:Original Data Rate | 644kbit/s | |
ベンチマークは各機種、各バージョンごとに 5 回ずつ行い、最も結果の良いものを掲載してある。上の表を見てもらうと分かるように、Spb Benchmark で行ったベンチマーク結果以上にはっきりと X3i との差が付いている。BetaPlayer では、ベンチマークの際に“Average Speed”の項目の速度で動画を再生するのだが、X3i とは比較にならないほどの高速再生に、驚かされた。間違いなく国内発売されている既存の Pocket PC の二歩三歩先を行くスペックと言える。これは、ビデオチップに IMAGEON(BetaPlayer はこのチップに最適化している)を搭載し、マルチメディアマシンとしては最強との呼び声も高い「Toshiba Pocket PC e800」(日本未発売)に迫る数値である(ユーザーのベンチマーク結果によれば、e800 では RL_MQB 再生の Average Speed が 320% を超えている)。 ■最後に 広報担当者によれば、X30 には IMAGEON のような特殊なチップは積まれていないようで、上記の動画再生能力などは純粋に PXA 270 プロセッサのパワーによるものではないか、とのこと。確かに、CPU を最高性能に設定した際の一般アプリケーションの動作は非常に高速で、画面の切り替えなどは Palm OS 搭載機並だった(少なくとも、筆者が所有する CLIE PEG-TH55 よりは速かった)。こうした性能面はもちろんだが、通信機能の強さ、ジョグダイヤルや無線 LAN をワンタッチで ON / OFF できる使い勝手の良さなど、QVGA 搭載機では史上最強の存在となった X30。すでに Pocket PC を所有している人であっても、買い換える価値のある製品と言えるだろう。
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