シャープ「Zaurus SL-C3000」スペシャルレビュー その 3

このページをDeliciousに追加 このページをはてなブックマークに追加 このページをYahoo!ブックマークに追加

2005年2月5日(土)版

シャープ「Zaurus SL-C3000」スペシャルレビュー その 3

ユーザーの手で広がる Linux Zaurus の世界

←その 2 へ  

■はじめに

これまでは標準の状態でのレビューを行ってきたが、今回は、国内外でリリースされているユーザー開発のソフトウェアに関して紹介していきたい。なお、現在リリースされているソフトウェアが膨大な数に上るため、ここでは“定番中の定番”と言われているものを中心に紹介する。その旨ご了承頂きたい。

■PDA の基本は PIM

そもそものスタート地点が電子“手帳”である Zaurus シリーズ。独自 OS を採用していた MI シリーズの時代は、Pocket PC や Palm よりも使いやすい PIM を搭載していた(これはあくまでデフォルト状態、なおかつ個人的な印象での話だが)。入力の簡易さは Palm がもちろん上だが、ToDo 以外の閲覧性は、Palm を圧倒していたと思う。しかし、SL シリーズで Linux OS を採用したのと同時に、PIM に関しては後退してしまったというのが、正直な感想だった。しかし、こうした問題も、ユーザー制作のソフトウェアを導入することで(完全に、とまではいかないが)解決する。

SL-C ザウルス向けの PIM ソフトとして、最も人気が高いのは、ichitokumei 氏の「Qualender」だろう。特徴は、ToDo との融合、ユーザー定義休日の登録、分類による色付け・表示のフィルターなどで、これ以外にも実にさまざまな機能が追加されている。予定の件名によるアイコン・背景表示機能を使えば、非常にカラフルで分かりやすいカレンダーになる。ユーザー定義休日と例外予定の動作に関して一部問題が残されているため「C3000 には(一応)未対応です」とのことだが、基本的に問題なく動作する。ちなみに、このソフトは標準のカレンダーとの置き換えになるので、注意してほしい(もちろん、アンインストールすれば標準に戻せる)。

アドレス帳に関しては、MI ザウルス時代にあった“会社一覧”表示などがないのは残念だが(何をいまさら、というのはさておき……)、デフォルトの状態でもそれなりに使えるため、これといったキラーアプリは出ていない。メモ帳は、やはり、おかだ氏の「EBt」を外すわけにはいかないだろう。このメモ帳ソフトの特徴は、作成したメモの管理を EBt 上で行え、さらに“メモ間で自由にリンクを張る”ことができる点にある。使いこなしには若干慣れが必要だが、一度理解してしまえば手放せないソフトの一つになるだろう(筆者もまだ有効な使い方を勉強中だ)。

・ichitokumei のページ(Qualender 提供元)
http://ichitokumei.hp.infoseek.co.jp/
・無茶な実験室(EBt 提供元)
http://www001.upp.so-net.ne.jp/tokada/

Qualender の月間表示。標準のカレンダーよりもカラフルで、細かな設定ができる
EBt は一見するとアイデアツリーのようにも見えるが、メモ間のリンクの概念が独特。PIM として利用しているユーザーもいるようだ

■マルチメディアはどこまでいける?

前回の記事で、マルチメディアに関しては「そこそこイケるが今一つ」と書いたが、こちらはソフトウェアの導入によって解消されるのだろうか? SL-C ザウルスで最も有名なマルチメディアプレイヤーと言えば、atty こと阿川耕司氏が「atty.jp」で公開している「mplayer-w100」と、mplayer を GUI で操作できる Anton Maslovsky 氏の「kino2」(atty 氏の mplayer がベース)だ。Kino2 は、最近になって SL-C3000 対応版がリリースされたので、こちらをインストールするといいだろう。

こうしたソフトウェアを導入することによって、DivX 形式のファイル再生が可能になり、標準の「Movie Player」よりも滑らかに動画が再生できるようになる。しかし、残念ながら現時点では、VGA 解像度で 1Mbps という PC と同等の動画ファイルを(特にビデオチップを積んでいない機種ですら)24FPS 以上で楽々再生できる Pocket PC には及ばない、というのが結論だ。DivX 形式の動画として、Pocket PC の動画再生テストでおなじみの“RL_MQB_320x240_512_1281.avi”を再生してみたのだが、やはり Pocket PC ほど滑らかにはいかず、コマ落ちする。

キャプチャカードで録画した 352×240 ドット / 1152kbps のMPEG1 ファイルは、若干の引っかかりこそあれ、かなり滑らかに再生されていたので、画質と滑らかさの両方を犠牲にしたくない人は、MPEG1 形式を選ぶのもいいだろう(ファイル容量は大幅に増えるが、それこそ 4GBHDD が生きるというものだ)。もちろん、滑らかさを犠牲にすれば、標準の Movie Player でもじゅうぶんに使用に耐える。


・My Zaurus Page(Kino2 配布元)
http://my-zaurus.narod.ru/
・atty.jp
http://atty.jp/

Kino2。Pocket PC ユーザーにとっての betaplayer のような存在だが、 何も考えずに使える betaplayer と比べると、まだまだ発展中という印象だ

■日本語入力マシンとしての SL-C ザウルス

キーボードを搭載している SL-C ザウルスは、ほかの PDA とは比べものにならないほど日本語入力が快適だ。しかし、標準のメモ帳は細かな設定ができず、使い勝手が今一つ。となれば、優れたテキストエディターが欲しくなる。そこでお薦めしたいのが、Satoshi 氏の「ZEditor」だ。このエディターは、SL-C ザウルスが登場した初期のころから存在し、すでに幾度にもわたって改良が施されている。文字コードの自動判定や検索・置換、オートインデント、文字カウントなど、Windows 用のエディタと比べても遜色のない完成度と言える。動作も非常に軽快で、取材先にノート PC を持って行くのが面倒な、筆者のような人間には必須ソフトと言ってもいい。ちなみに、書き上げたテキストの閲覧には、任意の見出し行を持つテキストや、階層付きテキスト、mbox 形式などの閲覧が可能なビューワ「TTextReader」が便利だ。

ひだかたかひろ氏の「QPOBox」も忘れてはいけないソフトだ(ベースとなっている増井俊之氏の「POBox」は、Pocket PC にも移植されているので、ご存じの方も多いだろう)。このソフトは、MS-IME や ATOK のような、いわゆる“IME(Input Method Editor)”で、文字が入力される度に、専用辞書内をインクリメンタルサーチして、入力候補を次々と表示してくれる。長文入力を想定して作られたものではないため、「通常の IME よりもすべての面で優れている」とまでは言わないが、なかなか思い通りの変換候補が出てこない標準の IME に不満を感じている人は、こちらを使ってみるのもいいだろう。


・Satoshi 村(ZEditor 提供元)
http://satoshi.web5.jp/
・class Takahiro(QPOBox 提供元)
http://takahr.dhis.portside.net/
・Linux Zaurus 用フリーソフト(TTextReader 提供元)
http://www2.gol.com/users/ikezawa/zaurus/zaurus.html

ZEditor を使用しているところ。画面は背景色や文字色を変えてある。メニューの豊富さからも分かるように、PC 用のエディタを使っているのと変わらない感覚で使える
こちらは QPOBox を ZEditor で使っているところ。画像の下に変換候補がずらりと並んでいるのが分かるだろうか?

■使い勝手が格段にアップする「KeyHelper Applet」

さて、現在出回っている SL-C ザウルス用のアプリケーションの中で、多くのユーザーが「これは最初に入れておいた方がいいだろう」と考えているのは、恐らく yakty 氏の「KeyHelper Applet」(フリーウェア)だろう。このソフトは、いわゆるカスタマイズツールだ。最初にインストールした状態でも、起動中のアプリケーションを切り替えられるなど、非常に便利なのだが、カスタマイズすることで、キーマッピングの変更やアプリケーションのショートカット起動などができるようになり、ほとんど画面をタップする必要がなくなる。SL-C ザウルスの最大の特徴は、やはりキーボードを内蔵していることであり、キーボードを最大限に活用できるようになるのが、この KeyHelper Applet というソフトなのである。

ただし、KeyHelper Applet は、使い勝手を良くするまでの設定が面倒。設定に関しては、mono93 氏が運営するサイト“私家版携帯端末考”(現在はサイト移転中のようで、下記のURLでの運営は 2005 年 3 月末に終了予定)や mobachiki 氏の“モバチキ”に非常に詳しく、なおかつ丁寧に説明されているので、そちらを参考にすると良いだろう。ちなみに、設定が GUI 上で行えるプラグイン「KeyHelper Conf」も用意されているので、設定ファイルにエディタなどで手を入れるのが面倒という人は、こちらもセットで入手しておこう。


・LinuZau ToolBox(KeyHelper Applet 提供元)
http://tbox.jpn.org/linuzau/
・私家版携帯端末考
http://www.yo.rim.or.jp/~mono93/mobile/
・モバチキ
http://mobachiki.com/windowsce/

KeyHelper Conf の設定画面。Original Key で押したキーを Mapping Key で押したキーに変えるための、XML ファイルに記述する書式を出力してくれる

■禁断の世界――カーネルアップデートと“pdaXrom”

ここまでの話は、基本的にすべて Qtopia 上で動作するソフトの話だったが、そもそも SL-C シリーズは、Linux マシンである。Linux ユーザーと言えばカスタマイズ好き――。そんな彼らの間で最も注目度の高いのが、“スペシャルカーネル”と“pdaXrom”だ。いずれも、それなりの知識が必要とされるものであり、気軽に導入を試みると「二度と起動しない」という事態を引き起こす可能性がある。

まずスペシャルカーネルだが、これは もともとのカーネル(=OS の基本機能を実装したソフトウェア)にユーザーが手を入れたものだ。導入することによって、動作速度が劇的に向上する、クロック数や電圧が変えられる、などの効果が得られる。しかし、OS のコア部分をいじったものであり、導入に際して、本来ユーザーが設定することを想定していない設定メニューを操作する必要があるため、場合によっては本体の故障を引き起こす可能性がある。作業の危険度は非常に高いと言えるだろう。SL-C3000 用のスペシャルカーネルは、山田哲靖氏の「Hack on the Linux」で公開されている。

一方の pdaXrom は、一言で言ってしまうと“代替 OS”だ。こちらは先のスペシャルカーネルよりもさらに作業の危険度は高く、Qtopia そのものを消し去り、OS をごっそり入れ替えてしまうことになる。残念ながら現時点では、SL-C3000 には対応していないようだが、今現在、InternetExplorer を脅かす存在として最も注目されている Mozilla Foundation のインターネットブラウザ「Firefox」や同じく Linux ユーザーの定番となっている国産メールクライアント(兼ニュースリーダー)「Sylpheed」も、この pdaXrom 上で動作する。

最近になって、日本語化済みのパッケージがリリースされたこともあり、さほど難しい手順を踏むことなく導入ができるようになった。しかし、OS の入れ替えを行うことになる上に、導入までの過程で操作を間違うと取り返しのつかない作業も必要とされるので、初心者にはやはりお勧めはできない(PIM としての使い勝手も落ちる)。なお、pdaXrom に関しては、Randolph 氏の日本語解説サイト「pdaXrom.jp」にまとめられている日本語化済みパッケージの入手や、詳しい導入方法などは、こちらのサイトからたどることが可能だ。

・Hack on the Linux(SL-C3000 special kernel 提供元)
http://tetsu.homelinux.org/
・pdaXrom.jp
http://pdaxrom.sourceforge.jp/wiki/

写真は、pdaXrom を導入した SL-C760 で Firefox を立ち上げているところ。その再現性は、NetFront とは比較にならないほど高い。早く SL-C3000 でも使ってみたいものだ

■情報収集はどこでする?

国内で SL-C ザウルスのソフトウェアに関する情報を入手したい人は、ジャーナリスト、武井一巳氏が運営する「K's Press」内の「Zaurus アプリケーション大全」をブックマークしておくといいだろう。ここは、国内外でリリースされている SL-C ザウルス用のソフトウェアをカテゴリ分けし、提供元のリンクやバージョン情報などを掲載しているページだ。各ソフトごとの解説が付いているわけではないが、どのようなカテゴリにどのようなソフトがあるかを知っておくのに便利だ。また、ソフトのバージョンアップも常時更新されている。

情報としてはやや古いものになるが、近藤靖浩氏の「Zaurus ハマリ道」や、F.U.氏の「Zaurus 別館」も、ソフトウェアがカテゴリ別に紹介されていて、ちょっとした概要なども記されている。ソフトウェア以外の、技術面も含む全般的な最新情報を入手したい人は、にゃののん氏の「りなざうテクノウ」、「ザウルスユーザーでその名を知らぬ人はいない」と言われる塚本牧生氏の「Walrus,Visit.」がお薦めだ。


・Zaurus アプリケーション大全
http://www.takei.gr.jp/zaurus/zbook.html
・Zaurus ハマリ道
http://park11.wakwak.com/~nkon/homepc/zaurus/
・Zaurus 別館
http://csx.jp/~zaurus/
・りなざうテクノウ(Linux Zaurus Technical Know-how)
http://www.areanine.gr.jp/~nyano/
・Walrus,Visit.
http://digit.que.ne.jp/visit/

■最後に

ここに紹介した以外にも、巨大掲示板“2 ちゃんねる”用のブラウザ「q2ch」や、pop メーラーの「qpop」、高機能ファイラの「Tree! Explorer QT」など、SL-C ザウルスの使い勝手を 2 倍にも 3 倍にもしてくれる優秀なソフトウェアが多数存在する。Pocket PC や Palm に比べて、インストールや使いこなしに深い知識を必要とするようなものもあるが、使いこなせるようになれば、ほかの PDA 以上に自由度の高いカスマイズができてしまうのも、SL-C ザウルスの魅力だろう。ちょっと敷居は高いが、PDA をとことん遊び尽くしたいという“探求者”は、一度トライしてみるといいだろう。



シャープ「Zaurus SL-C3000」スペシャルレビュー その 3

Reported by タカシゲ


Last-modified: Sun, 24 May 2009 23:45:30 JST (3831d)