 ■ 続き 世間がワールドカップ真っ盛りの今、世界初の Intel XScale アーキテクチャCPU「PXA250 400MHz」を採用した Pocket PC 2002「GENIO e550G」のロードテストをお届けしている。しかも、この東芝「GENIO e550G」は、ワールドカップ公認 PDA であるわけで、なんともタイムリーだ。 さて、第2回は、この「XScale PXA250 400MHz」の実力を遂に登場した実機を使って測定してみよう。 ■ Pocket PC 2002 端末は、全部 StrongARM に統一されたのはずでは? この東芝「GENIO e550G」が採用している OS は、マイクロソフトの最新PDA用OS(プラットフォーム)「Pocket PC 2002」だ。この Pocket PC 2002 というプラットフォームは、WindowsCE OS Version 3.0 をベースに、Pocket Outlook 等のアプリケーションを追加して作られている。 元々、Intel x86互換プロセッサにしか対応しないデスクトップ用の「Windows98/Me/2000/XP」に比べると、WindowsCE OS というのは、MIPS、SH、ARM、PowerPC、x86 といった様々な CPUアーキテクチャに対応することが可能で、実際、Pocket PC 2002 の一つ前のバージョンにあたる「Pocket PC (区別するために、ここでは Pocket PC 2000 と呼ぶ)」では、StrongARM、MIPS Vr4131、Vr4122、SH3 等のバラエティに富んだ CPU が各社各様に採用されていた。 ところが、同じプラットフォームの中に、CPU が分散していると、ユーザーにとっては無用な負担を強いられる。ある程度のレベルのユーザーになれば、苦労することはないだろうが、自分の Pocket PC が何の CPU を採用しているかを知り、アプリケーションをインストールする際に、それぞれの CPU のために作られた実行ファイルをダウンロードしてくる必要があった。もちろん、インストーラが自動的に、利用している Pocket PC 端末の CPU を判別してくれるソフトも多かったが、フリーソフトなどでは、そうはいかないものも多かった。 こうした状況を何とかしようとして、マイクロソフトが選択した手段が、「Pocket PC 2002」プラットフォームにおける CPU 種別の絞込み。従来の MIPS、SH3 系列の CPU は利用できなくなり、Intel の ARMアーキテクチャに準拠した「StrongARM SA-1110 206MHz」というプロセッサの採用を、全メーカーに義務づけた。 ■ XScale PXA250 は、StrongARM バイナリ完全互換 こうした中で、今回東芝の第2世代となる「Pocket PC 2002」が、「StrongARM」ではなく「XScale」という聞きなれないプロセッサを使用しているのは不思議と思う人も少なからずいるだろう。 実は、この「XScale PXA250」は、インテル自身が、StrongARM の次世代プロセッサと位置付けるもので、内部のアーキテクチャは大幅に変化し、命令セットも拡張されながら、従来の「StrongARM」の実行ファイルを、まったくそのまま動作させられるのだ。 この新しい「XScale Intel PXA250」アプリケーションプロセッサは、ただ、動作させられるだけでなく、長らく 206MHz で止まっていたクロックを、一気に 400MHz にまで引き上げることに成功した。さらには、消費電力も小さくなり、PDA のバッテリ動作時間を延ばすことができるという、いいことづくめの CPU なのだ。 ■ 本当に XScale PXA250 400MHz は高速か? さて、以上は、実機の登場を待たずして、インテル社のホームページ等を参考にすればいくらでもかける話だ。それでは、実際に登場した「GENIO e550G」は、従来機種「GENIO e550X」に比べて、どのくらい高速なのだろうか? 詳細なベンチマークの前に、WindowsCE FAN のメモリベンチマークを利用して、その速度を計測してみた。 計測の条件は、下記のとおりだ。 【計測条件】 - GENIO e550X は、AC電源を接続した状態でリセット直後の状態で測定
- GENIO e550G は、400MHz に切り替えた後、一旦リセットして、その直後の状態で測定。
- さらに、200MHz に切り替えた後、一旦リセットして、その直後の状態で測定
■ 結果 結果は、下記のようになった。確かに、XScale PXA250 400MHz は高速だが、純粋にクロックで見られるように、StrongARM の2倍高速なわけでもないようだ。 | シーケンシャル | ランダム | 読み | 書き | 読み | 書き | 東芝 GENIO e550G (XScale PXA250 400MHz) | 285 | 7938 | 441 | 7882 | 東芝 GENIO e550G (XScale PXA250 200MHz) | 489 | 14878 | 682 | 14772 | 東芝 GENIO e550X (StrongARM 206MHz) | 385 | 12341 | 573 | 12279 |
■ Intel PXA250 400MHz は、高速、ただし、200MHz では、StrongARM 206MHz より遅い!? 結果の表を見ると分かるとおり、メモリベンチマークの結果を見ると、確かに、GENIO e550G は、GENIO e550X よりも、約1.5倍高速だ。前機種の登場から、わずか半年で、この速度向上ははっきりいってスゴイ。これで、バッテリでの駆動時間は、StrongARM 206MHz 並みなのだから、GENIO e550G はまさに「第2世代」の「Pocket PC 2002」端末と認識することができる。 一方で、GENIO e550G の 200MHz モードの結果は、GENIO e550X よりも劣るものとなった。これは純粋に、GENIO e550X がよくチューニングされているという見方もあるだろうが、やはり残念な結果といえそうだ。ただし、これが一概に StrongARM に劣るとはいえない。XScale PXA250 アプリケーションプロセッサでは、低クロックモードでは、その分バッテリの消耗を押さえることができる。PDA としてみたときには、液晶のフロントライトの消費電力が大きいため、クロックを落としても、2倍持つというわけにはいかないが、それでも、カタログスペックでは3割以上の長い駆動時間を実現できる。 逆に、StrongARM 206MHz プロセッサは、XScale の何MHz に相当するだろうか? と計算してみると、この結果から計算すると XScale PXA250 の約 300MHz 相当となる。なかなか微妙な線となった。 この原因は、まだチップセット等を含めた XScale 全体のチューニングが進んでいないだろうこと、「Pocket PC 2002」がXScale ネイティブのコードで書かれていないことなどが挙げられるだろう。また、StrongARM では5段だったパイプラインステージが、XScale では 7/8段と長くなっていることも影響していると思われる。 ■ XScale は買いか? それでは、最後に、XScale プロセッサを採用したPDA は買いか、という観点で考えてみよう。 まず、300MHz 以上で動く、XScale PXA250 プロセッサを採用していれば、StrongARM 206MHz よりも高速だ。 さらに、低クロックモードで、メモ帳閲覧や、アドレス帳等パフォーマンスを必要としないアプリケーションでは、長時間利用が実現されている。 逆に、現時点では、マイクロソフトは、Pocket PC 2002 用の開発ツールや、WindowsCE.NET 用に、XScale に最適化されたコードを吐き出すコンパイラを投入していないようだ。今後、どうなるかは不明だが、初期ロットの後継プロセッサで、すでに、同じ実行ファイルを実行して、1.5倍ものパフォーマンスが得られていれば、特に、急いで対応しないだろうという気がする。 ただし、今後、次世代 Pocket PC では、確実にそのプラットフォームは、「XScale PXA250」が選択されるだろう。そのとき、Flash ROM のアップグレードで、XScale 本来のパフォーマンスを最大限に引き出せるようになるかもしれない。 と考えると、筆者的には、XScale PXA250 ベースの PDA を選びたい。 ■ 次回は? さて、今回は意外と書いてみると硬い内容になってしまったが、次回は、付属アプリケーションについても触れていきたいと思っている。
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