 | Jornada728 |
■ はじめに 日本hpは、2002年6月8日、キーボード内蔵型のハンドヘルド「Jornada728」を発売した。従来のjornada720、jornada710の流れを汲む形状と基本機能で、CPUも従来と同じStrongARM 206MHzを採用している。Jornada728 の基本的なレビューについては、すでに発表時に WindowsCE FAN でも取り上げたので、そちらを参照してほしい。
 | これが新しいJornada728の本体カラー |
■ 好感の持てるシルバーカラーリング さて、Jornada728は、形状こそjornada680からの流れを汲むものの、カラーリングは従来のダークカラーから、非常に明るいシルバーに変更となった。実はこうした流れは、携帯電話のカラーリングの変化とまったく同じ流れだ。10年前には黒一色だった携帯電話も、今はシルバー系が中心。それに鮮やかな原色系のカラーも増えてきた。キーボードのない Pocket PC では、すでにカシオの CASSIOPEIA E-700 がこうした流れを先取りしているし、キーボード内蔵の H/PC では、NTTドコモのシグマリオンがやはりシルバー系だ。筆者も、やはりこうした明るいカラーリングが好きなので、Jornada728の今回のカラーリングはは、個人的にはすごく気に入っている。 ふたを閉じたときの「hp jornada」のロゴプレート部分に曲線を取り入れたデザインも最初こそ驚くが、これまで10日間ほど使ってみて嫌味がない。むしろ、非常に高級感を感じることができる。このあたりは、大きさが同じ NTTドコモのシグマリオンともつい比較したくなるだろうが、筆者のみたところでは、ふたを閉じた状態では、シグマリオンのゼロハリバートンデザインも、今回のJornada728デザインも完成度としては上々。好みこそあれ甲乙つけ難い。一方で、ふたを開けたときのガジェットとしての完成度はJornaad728の方が上だ。Jornada728の方がよりマシンを感じさせる。これは内面の塗装の違いによるものだろう。  | 素直なキー配列。小さいが慣れると確かに打てる |
■ キーボード=独特の味の好き嫌い 日本HPのハンドヘルドといえば、今はJornadaというブランドになっているが、実はどんなハンドヘルドメーカーよりも歴史と実績がある。MS-DOSの動いた200LX系につながる系列のマシンだ。モバイルマニア御用達の一品で、今でも熱烈なファンがいる。フリーソフトも多く、表計算も、メモ帳も、多機能電卓も、今と変わらず快適に使うことができた。 さて、そんな歴史のあるJornada728のキーボードだけに、小さいながらも使い勝手は悪くない、とそう書きたいところなのだが、筆者には意外なほど辛い。筆者は、シグマリオンの変則キーボードでもブラインドタッチができるほどのキーボード習得スキルを持っていると思っているのだが、軽く使い始めて10日間まだ慣れることができない。とはいえ、長い文章を作るのは、今お読みいただいている原稿がはじめてなので、書いているうちに慣れるかも。書き始めたときには、すごいイライラしたのだが、ここまで書き進めるうちに、2文節くらいはミスタッチなしに打ち込めるようになった。(編集後記:結局随分と慣れて快適に文書を書き終えました) ちなみに、筆者より先輩のモバイラーの皆様に言わせると、Jornadaには「Jornada「打ち」と呼ばれる打鍵方法があるそうで、キーボードの上で、指を軽く浮かすようにすることで、慣れるとかなり高速に打ち込みができるらしい。何といっても、メモを大量にとりそうな雑誌の編集記者にはJornadaを携帯されている方が多いので、きっと慣れると手放せないくらい快適なのだと思われる。 キーボードについての話が出たところで、ちょっと脱線すると、長文の入力と編集なら、間違いなくNECのモバイルギアである。もう、2年近くも新製品が登場していないのが気にはなるが、多くの大型販売店で買える。新聞記者や、雑誌のニュース速報などを担当されている方には、モバイルギアの所有者が多く、PC系のカンファレンスの基調講演にいくと、結構な数の方が、カタカタとモバイルギアをたたいているのが見かけられる。 また、近年では小型軽量のノートパソコンは、キーボード内蔵ハンドヘルドの市場をすっかり食ってしまった感のある。無理もない話で、キーボードはどんなものでも、モバイルギア並には使いものになって、モバイルギア並の重量で、SVGAやXGAに迫るハンドヘルドに比べて大きな画面で、ソフトウェアの動作にも制限がない。おまけに、バッテリもカタログ上は6時間とか、10時間とか謳われて、実際にも3時間程度使えるものはざらになってきている。 一方でPocket PCにも、外付けキーボードがある。特にターガスの折りたたみキーボードは4つ折にするとPocket PC本体並にコンパクトでありながら、開くとA4サイズのノートパソコンより大型のキーボードになる。打鍵感もいい感じで、キーボードの完成度は最高だ。ただし、問題はPocket PC本体のバッテリを多く消費してしまう点と、電車の中などで(周りの視線を集めすぎるため) 使いにくい点が、難点だ。 最後に本体のサイズが同じくらいのシグマリオンとのキーボードの特徴の違いについて述べたい。 前のシグマリオンのレポートをお読みいただけるとおわかりいただけるのだが、筆者はシグマリオンのキーボードは好きである。キーの大きさは小さいながらも最低限のサイズを保っており、打ちやすい。また、優れている点として、A6-A10までのファンクションキーがキーボード上部に配置してあり、内蔵しているPocket ATOKとの組み合わせで、よい使い勝手を実現している。一方で、シグマリオンは横のキー幅が足らず、通常なら右手の小指で打ち込めるあたりの記号が、上段のキーとして配置される、かなり変則なキーボード構成となってしまっている。特に、括弧やコロン等を多く入力する場合には使い勝手として厳しい。 一方でJornada728は、キートップが小さいことを除けば、ほぼ普通のキー配列で、キーの小ささに慣れれば、非常に自然に打ち込むことができる。キーボードの項を書き始めたときにはミスタイプが多くイライラしていた筆者だが、ここまで書き進める間にほぼ慣れた。リズミカルに文章を書くことができている。一方で、キーボード上にファンクションキーがないのは、かな漢字変換時のネックになっている。また、漢字キーがキーボードの左側になく、右側にあるのも、なんか変な気はする。 もっとも、こうした問題は、キーのアサインを変更するソフトや、CTRLキーを併用したショートカットを覚えると気にならなくなる。返ってファンクションキーを使うよりも、キー入力速度は上げられるかもしれない。 - CTRL+I 全角カタカナ変換
- CTRL+T 半角ローマ字
- CTRL+U 先頭から順にカタカナへ
- CTRL+O 半角カタカナ変換
- CTRL+P 全角ローマ字変換
 | 個人的には使いづらい右側にある漢字キー |
|  | 最上段は、すべてアプリケーション起動キーとなっている。 |
|  | キーボード左側。普通の日本語キーボードと同じ配列だ |
|  | キーボード右側。こちらも普通のキーボードとほぼ同じ配列だ。 |
|
■ バッテリの持ちは本物だ 最後に、標準バッテリで利用していた感想を述べたい。 Jornada728 は、購入時に添付されている標準バッテリを利用しながら、標準で最大14時間の連続駆動が可能だ。 もっとも、カタログスペックだけなら、各社独自の測定方法をカタログに注記することで、いくらでも利用時間を延ばすことができる。しかし、ユーザーの立場からすると「知りたいのは自分の使い方でどのくらい使えるか?」である。 その点で、Jornada728 は非常に優秀な結果をたたき出した。 試用期間がそれほど長くないので、厳密なベンチマークをやったわけではないのだが、こんな使い方が可能だった。 木曜日の朝 9:00 頃、フルに充電。 木曜日のうちに、約2時間ほど、Pocket Word で原稿の修正。原稿は、文字主体で、文字数で、1万字程度のものだった。読みながら、ぼちぼちと修正すると言うスタイル。 金曜日の夕方から、3時間ほど原稿の作成。(今書いている原稿だ) その後、自宅に戻って、ほったらかしで、先ほど電源を入れてみるとまだ半分以上のバッテリが残っている。 もちろん、利用時間は5時間なので、カタログ値 14時間のおよそ半分くらいの時間しか使っていない。しかし、それとは別に4日間まったく充電せずに、これだけのバッテリが残っているのは素晴らしいの一言に尽きる。 ちなみに、サイズが同じくらいのNTTドコモ シグマリオンIIでは、同じくカタログスペックは 5時間〜10時間となっている。シグマリオンIIでは、P-in master での連続通信で7時間半という記録を達成している(バックライトはオフ時)。一方で、バックライトをバリバリに利用した、文字入力時には、カタログスペックどおり4時間 〜 5時間でバッテリ残量警告が現れてきてしまう。 また、ACアダプタを接続せずに放置しておくと、バッテリの減りが早い。 同じように4日間おいておくと、その後、1時間もフルには利用できないのではないか。 そう考えると、Palm的な言い方をすれば、「1週間充電不要。(ただし、1日1時間未満の利用の場合)」というキャッチになるのではないかとすら思う。 このあたりはもう少し使い込んでみないと、何ともいえないが。 ■ まとめ 以上、非常に短期間ではあるが、日本HPのキーボード内蔵型ハンドヘルド「Jornada728」のインプレッションをお届けした。 最初デザインに惹かれながらも、慣れないキーボードに戸惑いながら、やがては、その長時間バッテリとキータッチのよさにはまった感じだ。特に、バッテリリークが少ないのがよい。割と、PDA とかにずぼらで、週末には鞄の中に入れっぱなしにする私にとって、それでも十分な力が発揮できる「Jornada728」は理想的とも言える。 この分なら、朝の9時から、夜の11時過ぎまでバリバリ会議をこなすビジネスマンでも、十分応えてくれる。さらに大容量バッテリを利用すれば、無線LAN や PHS を組み合わせて、メールのやり取りなどを行っても大丈夫なのではないか。そう考えると、「Jornada728」は、世界最強のメール・原稿書きマシンと断言しても、過言ではないだろう。
|