東芝は、2年後には実用化? 次世代モバイル機器用バッテリの主力は燃料電池になるか?

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2002年10月25日(金)版

東芝は、2年後には実用化? 次世代モバイル機器用バッテリの主力は燃料電池になるか?

WPC EXPO 2002 レポート ブロードバンド時代 = ユビキタス・ネット社会を拓く =

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まだかなり大きいが、一体としてみたらそこそこの
サイズ。バッテリ容量を活かした専用機
なら今すぐにでも作れそう。

■ はじめに

 PDA は使いこなせるようになると手放せない。
 外出している間、メールをチェックしたり、ネットサーフィンしたり、時にはゲームで遊んで、疲れたら好きな音楽を聴くことができる。

 さて、オフィスから客先に、音楽を聴きながら楽しく到着して、いざ商談となったら、そこで「バッテリ残量が低下しています」などのメッセージが出て、PDA が使い物にならなくなったことはないだろうか。また、バリバリ使っていなくても、1週間も放っておくと、バッテリが空になってしまっていることもある。

 充電なんて面倒なことはせずに、使いたいときに、使いたいだけ使いたい。特に筆者のように利用することに怠け者なユーザーの場合、こうした気持ちが強い。PDA はよく鞄の中に入れっぱなしにして、その癖、結構利用するので、はっと気が付くと使いたいのにバッテリがないということがよくあるのだ。(結局筆者の場合は、Jornada728や GENIO e550G などに別売の大容量バッテリを増設して使っている)

 しかし、こうしたバッテリ残量不足による悲劇も、数年後には解決しているかもしれない。その突破口になるかもしれないものが、本日ご紹介する東芝が WPC EXPO 2002 で開発したDMFC燃料電池だ。

■ そもそも燃料電池とは?

 東芝が今回 WPC EXPO 2002 で展示したのは、DMFC燃料電池。「DMFC」って何? という前に、まず燃料電池ってそもそも何なのかをご紹介しておきたい。)筆者も、WPC EXPO 2002 で東芝ブースを見た後にいくつか文献をあたっただけなので、下記に間違いがあった場合には、専門家の方にはぜひご指導いただきたいと思ってます)

 インターネット上の検索エンジンで「燃料電池とは」と入力して検索してみると、すぐにいろいろなサイトが出てくるだろう。実際にやってみてもらうとすぐに分かると思うが、

「燃料電池とは、水素と空気(酸素)の反応で電気を起こす」

小さな発電機のことだ。

 なんと燃料電池の原理が発見されたのは、1839年頃のこと。日本はまだ江戸時代末期だ。「乾」電池は、その後1885年に登場したとされるので、燃料電池は今の乾電池の祖先とも言うべき存在だ。そんな燃料電池が最近になって注目されはじめたのは、技術的に困難だが、今のリチウムイオン電池に比べて、軽くて長持ちするバッテリを実現できる可能性がでてきたからだ。世界的に電気自動車のような低公害車のニーズが高まったり、家庭用としても太陽電池などのクリーンエネルギーが注目され始めたことも、燃料電池の開発を後押ししている。現時点でも、リチウムイオン電池に比べて、同じ重さなら 3〜8倍程度の利用ができる可能性があるというし、水素と酸素が反応してできるのは水だけだ。これなら空気も汚れないというわけだ。

■ メタノールから水素を取り出す

 燃料電池は、水素と空気(酸素)の反応から電気を取り出すものだ、ということはお分かりいただけたと思うのだが、ここに最初の大きな問題があった。それは「水素をいかにして貯蔵するか」だ。水素は、火気に触れると大爆発を起こす。昔の飛行船がよく爆発事故を起こしていたのも、内部に水素を利用していたためだ。(※ ちなみに今はヘリウムガス) 燃料電池をうっかり地面に落としたら爆発した、なんてことになったら困る。この問題のため長らく燃料電池が実用化されることはなかったようだ。

 ところが、化学(漢字はこれであってます)の発展により、この水素をメタノールから取り出すことができるようになった。タンクには、メタノールを保存しておき、使いたいときに「改質器」と呼ばれる化学反応器に通し、水素を取り出す燃料電池の登場だ。小型化も進んでおり、今年 3月にはカシオ計算機が実際にノートパソコンのバッテリを、このタイプの燃料電池に置き換えられるユニットを試作しており、なんと 20時間以上の連続使用ができたという。

 カシオのリリースを見ていただければ分かるとおり、このタイプの燃料電池はきわめて実用化に近い段階にあるように見える。

DMFC燃料電池の仕組み

■ そして DMFC 方式へ

 一方でこの方式は、メタノールから一度改質器を通して、水素を取り出すため、方式として複雑で、PDA に組み込めるほどは小型化しにくい(のではないか?)という見方もある。長い前置きだったが、こうした弱点を克服する新方式として登場してきたのが、今回東芝が展示した「DMFC燃料電池」と呼ばれるタイプの燃料電池だ。「DMFC」とは、Direct Methanol Fuel Cell の略で、日本語では「直接メタノール型燃料電池」と訳されることが多いようだ。ここまでの説明をじっくり読んでくれた方ならお分かりのとおり、メタノールから水素を取り出さずに、直接メタノール水溶液と空気から電気を取り出すことができる。

 東芝が開発した燃料電池は、この DMFC方式、すなわち、次世代の燃料電池だ。

 WPC EXPO 2002 で展示されていたパネルによれば、現時点で、この燃料電池は、リチウムイオンバッテリーの 3倍〜5倍の高エネルギー密度を達成しているという。写真をみていただければ分かるとおり、まだバッテリ自体が本体の3倍近い大きさで、とても「モバイル」とはいえないが、GPSと組み合わせて、登山や、航海用に利用できるようになれば、すぐにでも小さな需要はあるに違いない。

 ちなみに、これは、2002年3月のカシオのプレスリリースを読むと、この DMFC方式の小型実用化は困難とわざわざ注釈が付いているくらいの技術なのだからなかなかの快挙なのだ。

年代で見る2次電池の進化 - 東芝の挑戦

■ みんなが恩恵にあずかれるのは?

 さて、以上、細かい話を長々と書いてきたが、この燃料電池を我々が気軽に使えるようになるのはいつのことだろう。
 今回の東芝のDMFC燃料電池も、カシオの燃料電池も 2004年をターゲットにしている。そこから、燃料電池用のメタノールパックが販売され始め、全国的に近くのコンビニで、この燃料電池用のメタノールパックが販売されるようになるのは、2010年くらいの先になると見られている。その過程では、この燃料電池の技術が、車や家庭内で広く使われていくことになるだろう。もしかすると、PDA等で採用される前に、ノートパソコン用の大容量バッテリや、飛行機機内用のバッテリパックなどの形で、登場するかもしれない。

 というわけで、2010年には、お弁当に入っている魚の形の醤油さしくらいのサイズで、燃料電池用燃料パックがどこでも買えて、PDA のバッテリ切れは過去のものになっていくことを期待しよう。



東芝は、2年後には実用化? 次世代モバイル機器用バッテリの主力は燃料電池になるか?

Reported by けいたん


Last-modified: Sun, 24 May 2009 23:45:30 JST (3103d)